個別株投資 必ず押さえる6つの指標 その②

今回は個別株投資で最低限押さえるべき6つの指標をテーマに書いているシリーズ記事の2つ目になります。前回は株価の割安/高感を示す指標として、PERとPBRを取り上げました。本記事では営業利益と純利益という2つの利益の数字について、書いていきたいと思います。1記事目にも書いた通り、大部分は投資初心者向けになると思いますが、シリーズの最後には実際に私が銘柄分析をする際のやり方も紹介しようと思っていますので、初心者以外の方も参考にして頂けたら嬉しいです。
企業の攻撃力を計る二つの数字
営業利益
営業利益とは、売り上げから本業にかかる費用を引いて算出される数字で、企業が本業で稼ぎだした利益を指します。また、売上全体に占める営業利益の割合を営業利益率といい、営業利益率を見れば、企業が本業で稼ぐ力を知ることができます。架空のパン屋さんのきよさりベーカリーを例に考えます。きよさりベーカリーはかぼちゃが大好きなオーナーが開いた、かぼちゃを使ったパンやスイーツを販売するベーカリーです。そんなきよさりベーカリーの先月の売上高は100万円。かかった材料費、人件費、光熱費などの費用は合計90万円。この場合、営業利益は100万円-90万円=10万円、営業利益率は10万円÷100万円=10%になります。
営業利益率10%って、高いのか低いのかよくわからない・・・。

日本の上場企業の営業利益率の平均は大体5-7%と言われますが、業種によっても大きく違います。なので、私が営業益率を調べるときは、業種平均や同じ業種の複数の企業と比べて判断するようにしています。この記事を書きながら、営業利益率の高い国内メーカーについて調べてみました。
トヨタ自動車 | 12%(24年3月期) |
ファーストリテイリング | 16%(24年8月期) |
任天堂 | 32%(24年3月期) |
キーエンス | 51%(24年3月期) |
同じ国内メーカーでも企業によって大きな差があり面白いですよね。この表だけ見るとトヨタ自動車やファーストリテイリングの営業利益率が低いように見えますが、決してそうではありません。日本の上場企業平均からすればむしろ高いほうです。任天堂は自社で工場を持たず製造を委託することでコストを大きく圧縮、キーエンスは徹底的なマーケティングで顧客ニーズを掴み、付加価値の高い製品を提供することで驚異的な営業利益率をたたき出す。ちなみにキーエンスと同業種の三菱電機は6%(24年3月期)、オムロンは4%(24年3月期)でした。このように同じ業種で比較すると、稼ぐ力の高い企業がよくわかりますよね。個別銘柄を分析する際、最低限押さえておくべき指標はいくつかありますが、なかでも営業利益率はとても大事な数字だと考えています。営業利益率が高いほど、効率よくお金を稼ぐことのできる稼ぐ力の高い企業だと捉えています。また、営業利益率を調べる際は1つの年度だけではなく、過去の推移や今後の展望を分析するよう心がけています。
純利益
純利益とはその名の通り、売上からあらゆる費用や税金を差し引いて最終的に残る利益のことです。純利益は、先ほど解説した営業利益から更に、営業活動とは直接関係のない特別損益や税金などを差し引いて計算されます。例えば、きよさりベーカリーで火災があり修繕費が発生した場合、この修繕費も特別損失になります。他にも、新しくかぼちゃピザの新商品を出すためにピザ窯の購入費用を銀行から借りている場合、返済時に利子を払わなければなりませんが、この利払い費も該当します。これらの費用をすべて計算して差し引き、残った金額が純利益になります。
火災による修繕費とか含んじゃうと、企業の実力を見誤ることにならない?営業利益だけ見ていればいい気がするんだけど・・・。

なぜ営業利益だけではなく純利益も見ることが大事なのかというと、企業の純利益の使い道を知ることで、事業の成長性を推しはかることができるからです。具体的に純利益がどのように使われるかというと、例えば株主への配当や、企業の更なる成長に向けた投資などが挙げられます。なかでも、純利益のうちどれくらいを配当に回すのかを配当性向といい、日本の上場企業は30-50%程度が目安になると言われています。一般的に資金繰りの安定した成熟企業は配当性向が高く、事業をまだまだ大きくしていくぞ!というイケイケ成長企業は配当性向が低い傾向があります。そのため配当性向は高ければ高いほどいいというわけではありません。少額でも配当金で安定したキャッシュフロー(インカムゲイン)を得たい投資家であれば配当性向が高い企業は魅力的でしょう。一方で、株価の値上がり益(キャピタルゲイン)を狙いたい投資家にとっては、配当よりも設備投資を優先し更なる事業規模拡大を目指す企業のほうが魅力的なはずです。私の場合は後者ですが、これは個々人がその投資においてどんなリターンを求めるのか、またどれくらいのリスクを許容できるのかによって変わってくるもので、どちらか一方が良いというものではありません。
まとめ
本記事では、企業の攻撃力を計る指標として営業利益と純利益の二つの利益の数字について書いてきました。私が営業利益率と純利益を確認する理由は、本業でしっかり稼ぐ力があるかどうか、そして稼いだ利益をどう使っているのか、を知るためです。これらを把握することで、数字以上に企業がどのような性格で、どのような展望を描いているのかを伺い知ることができると私は考えています。自分が期待しているリターンを得るために、その企業に投資することが果たして正しいのかどうか、これを確認するために必ず押さえなくてはならならい指標だと私は考えています。なお後続の記事では、企業の守備力を計る指標として、自己資本比率と流動比率について書いていますので、興味がある方はぜひ続けて読んで頂けたら嬉しいです!
