個別株投資 必ず押さえる6つの指標 その③

今回は個別株投資で最低限押さえるべき6つの指標をテーマに書いているシリーズ記事の3つ目になります。これまでにPERとPBR、営業利益と純利益というテーマで記事を書いてきました。本記事では自己資本比率と流動比率という2つの数字について、書いていきたいと思います。1記事目にも書いた通り、大部分は投資初心者向けになると思いますが、シリーズの最後には実際に私が銘柄分析をする際のやり方も紹介しようと思っていますので、初心者以外の方も参考にして頂けたら嬉しいです。
企業の守備力を計る二つの数字
自己資本比率
自己資本比率とは、読んで字のごとく企業の資産の内、自己資本が占める割合のことを指します。自己資本比率を見ることで、いざという時の耐久力を推しはかることができます。資産と資本は字面が似ているため混同してしまいがちですが、それぞれ全く違うものです。まず資本とは、初めに会社を作る際に準備した資本金であったり、これまでに事業で生み出し蓄積してきたお金のことです。一方で資産とは、この資本に負債を足した金額で、負債とは例えば、設備投資のために銀行から借りているお金などが該当します。自己資本比率が高いほど、事業環境に想定外の変化が起きた時にも耐え抜く力があると判断されます。例えばコロナのような伝染病で売り上げがいきなり半分になってしまった時、お金をたくさん持っている自己資本比率が高い会社の方が、生き残れる可能性が高いですよね。つまり、自己資本比率が高い企業はいざという時の倒産リスクが低く、投資をする上でのリスクも低いのです。
なるほど・・・?
なんか、わかったようなわからないような・・・?

わかりやすくするために、会社ではなく個人に置き換えて考えてみたいと思います。二人のサラリーマンきよさりとまろんくんを例に考えてみましょう。二人の懐事情は以下の通りです。個人でいう貯金が会社でいう資本で、車や家などのローンが負債にあたります。そして貯金とローンを足した金額が資産です。この例では、きよさりの自己資本比率は71%で、まろんくんの自己資本比率は33%です。そんな二人はある日、一緒にゴルフに出かけましたが、途中で交通事故にあい、しばらくの間仕事ができなくなってしまいました。二人の生活費が仮に同等だとすると、自己資本比率の高いきよさりは、収入が一定期間なくても、貯金を切り崩してなんとか耐え抜くことができそうですよね。

今度こそわかったよ!
要するに、自己資本比率の高い安全な会社を選べばいいんだね!

しかし、自己資本比率が高ければ高いほど、良い投資先であるとは限らないんです。自己資本比率が高いということは、たくさんのお金を懐で眠らせている、ということでもあります。資本をどのように使っているかというのも、個別銘柄を分析する上で重要な要素になります。株価の値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う投資家からすれば、事業拡大のための新たな設備投資や広告などのマーケティング費用にお金を積極的に使う会社の方が魅力的かもしれません。一方で、配当金で安定したキャッシュフロー(インカムゲイン)を得たい投資家からすれば、株主への配当に積極的に回してくれる会社の方が魅力的なはずです。前の記事の純利益のパートで書いたことと似てますが、投資家それぞれの立場によって(どんなリターンを望むのか)、この自己資本比率の捉え方も変わってくるのです。私個人の目安としては、50%以上は安全、20-49%は普通、19%以下は要調査とし、理由いかんにより投資判断をするようにしています。
流動比率
企業の守備力を計る二つ目の指標は、流動比率です。流動比率とは、流動資産における流動負債の割合を示す指標です。流動比率を見ることで、短期的(1年以内)な倒産リスクを推しはかることができます。まずは流動資産と流動負債について、解説します。流動資産とは、現預金や売掛金など短期的に現金化が可能な資産のことです。流動負債は短期的に返済しなくてはならない債務のことで、買掛金や短期の借金などが該当します。流動比率は、流動資産÷流動負債で計算することができ、100%を超えている場合は、今後1年以内に予定される支払い(流動負債)を、カバーすることのできる手元資金(流動資産)が確保されていることを意味します。流動比率の目安は業態によっても異なりますが、私は200%超えはリスクなし、150-199%はリスク低、100-149%はリスクあり、99%以下はリスク高と判断しています。大体の目安として、150%を下回る場合は深堀して、理由いかんで投資判断をするようにしています。
なんか自己資本比率と似てるよね?
自己資本比率だけでもいいんじゃない?

自己資本比率によってわかるのは、これから先のある時点で突然発生するかもしれないコロナや自然災害などへの耐久性です。一方で流動比率は、1年以内の短期的な資金繰りの健全性に焦点を当てており、より差し迫ったリスクを可視化する数字です。たしかに流動比率までみていないという投資家は結構いるのではないかと思います。しかし私は、自己資本比率と流動比率を合わせて確認しておくことが、投資におけるリスクを短期的・中長期的な時間軸から把握するために、重要なことではないかなと考えています。
まとめ
本記事では、企業の守備力を計るための指標として自己資本比率と流動比率について書きました。これらの数字を把握しておくことで、投資における短期的・中長期的リスクを把握することができると考えています。次回はここまでの3記事で紹介した指標を含め、私が実際どのように銘柄分析をしているかを書いていきたいと思いますので、ぜひ続けて読んで頂けたら嬉しいです!
